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『歌う女 歌わない女』

1977(フランス/ベルギー)116分 

監督:アニエス・ヴァルダ

(あらすじ)1962年の冬のパリ、ポムは歌手になることを夢みる17歳の女子高生。友人のシュザンヌは22歳で、妻のいる内縁の夫との間に2人の子がいる。3人目の子供を妊娠したが貧しく生むのをためらうシュザンヌに、ポムは両親を騙して手に入れた200フランを渡して中絶を手助けする。ポムは家を出て歌のアルバイトで初めての収入を得、シュザンヌにご馳走しようとするが、2人はシュザンヌの内縁の夫・ジェロームの自殺を発見する。

 別れ別れになったポムとシュザンヌは、10年後、パリ郊外の小都市で開かれたボビニー裁判で再会する。ポムは歌手になり、シュザンヌは女性のための家族プラニング・センターを開いて活躍していた。つかの間の再会のあと、2人は絵葉書をかわすようになる。

*「ボビニー裁判」(1972年)・・・レイプで妊娠した未成年の少女が、母親の同意を得て非合法の中絶をして訴えられた事件の裁判

フランスにはカトリック教徒が多く、カトリック教会では中絶は殺人と見なされ禁止されている。現在のフランスで中絶は合法の行為であるが、それは、この映画が描いている1970年代以降の女性たちの社会運動によって獲得された権利である。

シュザンヌは中絶のためにスイスへ行くようにとポムからお金を渡され、後年、ポム自身も中絶のためにオランダへ行っている。他の数人の女性たちと中絶ツアーに出掛けた様子が映画に描かれていた。

ウーマン・リブを描いた映画で勉強になったが、観ている間はそんなことはどうでもよく、ただ物語として面白く鑑賞できた。何よりも主人公である2人の女性が両者ともに魅力的で、共感できる部分もたくさんあった。

DVD特典の解説に、『この映画の宣伝で来日した監督のアニエス・ヴァルダが、水着を着たキャンペーンガールたちに「そんなことしていないで、こちらへ来て女の問題について一緒に話しましょう」と言った』というエピソードが書かれていた。作品にも、女同士の友情というよりは「連帯」が描かれていて、ヴァルダの女性たちに対する熱い思いを感じるような気がした。

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