『忘れじの面影』
1948(アメリカ)87分
監督:マックス・オフュルス
(あらすじ)決闘を明日に控えたステファン・ブラントは夜のうちに逃げてしまおうと準備をしている。と、召使いから一通の手紙を渡され開封する。それは死期の迫った女からの手紙であった。女は、少女時代、母と2人で住んでいたアパートの隣室にピアニストの男が引っ越してきた思い出から語り始める。その男こそ、ステファンであり、女の初恋の相手であった。
初恋の人をストーカー的執念で追い掛け続け、やっと思いを遂げたと思ったらすぐに離ればなれになり、数年後に再会を果たした時には男は何も覚えておらず、失望した女は去ったが死を前にして長い手紙を書いたという内容だけを考えると、そんなこと有るかよ!という感じなのだが(特に妊娠するほど濃密な一夜を過ごした相手を忘れるかね?)、映画を観ている間は「こんなこともあるかもしれない」と思ってしまうのだから不思議。結局、女は男に何も伝えられずに死んでしまったわけだし、男は男で手紙を読んだことで決闘という自分の死を受け入れるという悲劇なのだけれど、残酷さはほとんど感じられず、ひたすら甘美というか、ロマネスクってこういうことかもなぁ。ストーリーは大した問題ではなく、「恋心」を描いた作品という気がする。