『こわれゆく女』
1974(アメリカ)145分
監督:ジョン・カサヴェテス
(あらすじ)土木作業員のニックとその妻メイベルは、3人の子供をメイベルの母親に預け、夫婦2人で過ごす夜を設けようと計画。ところが、水道管が破裂する事故が起こり、ニックは徹夜で仕事をすることになってしまう。電話では平気を装ったメイベルだが、一人の時間に耐えきれず、夜の街へ繰り出す。翌朝、ニックは仲間の作業員を大勢連れて帰宅、メイベルは必死で自分を抑え彼らをもてなすが、些細な事がきっかけでニックの逆鱗にふれてしまう。
タイトルは『こわれゆく女』だけど、壊れているのは本当に彼女なのか。本当は夫の方なのかもしれないし、夫も含んだ周囲の人間全ても壊れているのかもしれない。主演のジーナ・ローランズとピーター・フォークの演技が凄まじかった。この夫婦は愛しあっていて2人だけの世界にいればある意味完璧なのかもしれない。だけど、結婚して生活するということは、互いの両親や子供たち、子供たちの学校、ニックの仕事と仕事関係者などなど、「社会」とのつながりを持たなければならないということで、2人の世界は「壊れて」しまう。メイベルは、「自分」であると同時に「妻」と「母」であろう、それも出来るだけ「良い」妻と母であろうと頑張っているのに、そのやり方が「常識」はずれであるために誤解ばかり生む。メイベルを「壊れてる」奴だとはどうしても思えない、病院に入院させられる直前のシーンでは思わず泣けてきてしまった。