『ザッツ・エンタテイメント』
1974(アメリカ)132分
監督:ジャック・ヘイリー・Jr.
(あらすじ)MGMミュージカルの変遷を、各作品のハイライト・シーンを並べて見せたミュージカル・アンソロジー。『ブロードウェイ・メロディ(1929)』にはじまるMGM社ミュージカルのなかから名シーンを抜粋し、プレゼンターたち(フレッド・アステア、ジーン・ケリー、エリザベス・テイラーら)がコメントを挟みつつ紹介してゆく。
観て良かった。ビックリした。アンソロジーだしと、ほとんど期待していなかったのだけど、とんでもなかった。映画に対する認識を改めないといけない。今まで「映画は夢」という言葉の意味を全く理解していなかったことを認識、反省。ハリウッドは大作主義に走って凋落したという言葉の「大作」とは何か、漠然とバカにしているだけで何もわかっていなかったなと思う。巨大なセットと大人数のエキストラが作り出す空間は、まさに映画でなければ表現できない異次元。しかも、その抽象度の高さにも驚いた。街並みなどのセットも、ロケ撮影が多い現在の感覚で、セットというのは写実的なできるだけリアルに見えるようなものが「良い」セットなのだと思ってきたが、いかにも「偽物」らしく見えることが重要という視点もあるのかもと発見。映画の中に在るものは、セットも人間も「偽物」だからこそ、観客も「夢」を見られる。大作映画の「夢」って本当に現実離れした、甘ったるい夢という意味だと思ってきたけれど、観客は夢を夢とわかって観ている、「醒めてみる夢」というシビアな側面もあるのかもしれない。観賞後、ジュディ・ガーランドの経歴を見て愕然、本作の内容と合わせて考えると、まさにハリウッドの光と影を体現している。