『或る夜の出来事』
1934(アメリカ)105分 白黒
監督:フランク・キャプラ
(あらすじ)大金持ちの一人娘エリーは、勝手に婚約を交わしたことに怒った父親によって豪華船に監禁されるも恋人に逢いたくてそこから脱走、ニューヨーク行きのバスに乗り込んだ。そのバスには失業中の新聞記者ピーターも乗っていて、ちょっとしたごたごたから2人は知り合いになる。娘を探そうとする父親は新聞にデカデカと彼女の記事を載せ、それを読んだピーターは特ダネをモノにしようと何食わぬ顔で世間知らずのエリーに手を焼きながらも愉快な旅を続けるのだった。
34年アカデミー賞、主要5部門(作品・監督・主演男優・主演女優・脚色賞)を独占した古典的恋愛コメディの傑作。主演はクラーク・ゲーブルとクローデット・コルベール。スクリューボール・コメディの代表的作品という以上の期待をしないで観始めたのだけれど、予想外にすごく面白かった。まず、父から逃亡するために娘はいきなり海に飛び込むし、ピーターとエリーの道中のやり取りが楽しいしお洒落、そして一番はエリーの父親。この父親像は意外だった。金にものを言わせる嫌な奴で娘を縛り付けるというのでは全然ない。娘の勝手な婚約に反対するのも相手の男が気に食わないからであり、最後の決着のつけ方に至って、行動の動機が娘への愛情であることがわかる。ヒロイン像も典型的なワガママなお嬢さまという面が強く、けっこうイライラしたりするのだけど、でもそれだけじゃない深みがこの父親によって与えられている気がする。終盤、ゲーブルが「海を愛する女性が理想だ」という台詞があって、だからエリーは冒頭で海に飛び込んだのかなと思った。泳ぎがキレイだったし。