『ピアノ・レッスン』
1993(オーストラリア/ニュージランド/フランス)121分
監督:ジェーン・カンビオン
(あらすじ)19世紀の半ば、スコットランドに住むエイダは6才の時に話すことをやめ、ピアノの音色を言葉代わりにしている。彼女は娘のフローラとともに、ニュージーランドの開拓民スチュアートの元に嫁いできた。出迎えの日、スチュアートは、エイダの運んできたピアノを海辺に置き去りにする。翌日、原住民に同化している男ベインズに頼み、海へピアノを弾きに出掛けるエイダ。ピアノを弾くエイダに強く惹き付けられたベインズは、後日、ピアノとエイダのレッスンと引き換えに土地を譲ると、スチュアートに申し出る。
高校の同級生が「この作品が生涯ベスト」と言っていた。『タイタニック』のローズ(ケイト・ウィンスレット)が一人生き残るラストに怒っていた彼女、卒業以来会っていないけれど、その後どんな恋愛をしたのだろう。この映画の主人公エイダの魂に、ボヴァリー夫人に通じるものを感じた。だから、わりと平和に落ち着く結末が意外だった。史実はよくわからないので、入植者と原住民の関係やベインズがどんな存在なのかにはちょっと解せないものがあるが、それを置いておけば、とにかくベインズが魅力的というか、彼を演じたハーヴェイ・カイテルが素晴らしいと思う。でも、エイダの夫スチュアートだって心底嫌な奴というわけではなく(むしろ娘は懐いているので良識的なのかも、その点もボヴァリー夫人の夫像と重なる)、気性の激しい女に手を焼く男たちの話と言えないこともなく、こういう作品を女性監督が撮るということに、納得感を覚える。