『逃げ去る恋』
1978(フランス)96分
監督:フランソワ・トリュフォー
(あらすじ)印刷所に勤めているアントワーヌ・ドワネルは、若い恋人サビーヌと付き合っている。妻クリスティーヌとは長らく別居を続けており、ついに(フランス初という)協議離婚が成立した。離婚の日、裁判所から出てきたアントワーヌを、彼のかつての恋人コレットが目撃。彼女は、恋人の経営する書店を訪れ、アントワーヌがかつて出版した自伝的な小説「愛のサラダ」を購入する。林間学校に行く息子のアルフォンスを駅まで送りに来たアントワーヌは、そこでコレットを見付け、彼女のいる列車に飛び乗る。
「アントワーヌ・ドワネルの冒険」シリーズの5作目でラスト作。もうアントワーヌに会えないと思うと寂しい。今作は総集編と言ってもいいほど、過去作の映像がたくさん差し挟まれるが、これが何とも言えず上手くいっていて、主題歌で始まって終わるつくりと言い、全体としてオシャレな作品だと思った。次々に恋人を変えるアントワーヌについて、過去の愛人が「妻も愛人も妹も乳母も看護婦もほしい人よ」と語り、物語の中で母の墓参りに行くくだりが出てきたのが興味深く、母を求め続ける彼は、きっと運命の恋人だと信じているサビーヌとも別れるんだろうなと思う。上記の言葉を語ったリリアーヌとクリスティーヌの関係やクリスティーヌとコレットが出会う展開も面白かった。アントワーヌが、コレットの両親と仲良くなった事や、クリスティーヌとの結婚を「彼女の家族全体に恋をしたんだ」と言う点は、両親の愛に恵まれなかった少年時代とつながっていることが本作でよくわかる。