『人間模様』
1949(日本)89分 白黒
監督:市川崑
(あらすじ)深夜、警察に連行された小松原は、身元引受人として大輪絹彦を呼び出す。お人好しの絹彦が来てくれたおかげで小松原は釈放されたが、ろくに礼も言わず、自身の秘書の吉野吟子とともに帰ってしまう。絹彦の母は学校長で、大輪家は学校の敷地内にある。隣家には学校経営をともにする新井家が住んでおり、新井家の砂丘子(さおこ)は絹彦の幼なじみである。砂丘子はお人好しで間が抜けた様子の絹彦を不甲斐ないと思っている。
絹彦、小松原、吟子、砂丘子の四角関係の物語とまとめることが出来る話だが、絹彦のキャラクターが特異で、そこが面白い。作中では「天使」「神様」と形容されているが、絹彦は私利私欲なく動く、究極の善人。その親切を受けた吟子が絹彦からの特別な愛情に期待を抱き、しかし「あの人に俗物的な愛情を求めてはいけない」と自制する。小松原は絹彦と対照的な人物で私利私欲で動く、その行動力を砂丘子は評価し、絹彦を批判する。絹彦自身の気持ちが一番わかりにくいというか、あまりに人間離れしているのだが、最後の方では少し「後悔」のような感情が見えて、そこの場面が良かった。絹彦役の俳優がかっこいいなあと調べてみたら、上原謙さんは加山雄三さんのお父さんだった。こういう所も古い邦画の楽しみの一つ。