『愛の昼下がり』
1972(フランス)98分
監督:エリック・ロメール
(あらすじ)妻エレーヌとまだ赤ん坊の娘とパリ郊外で暮らすフレデリック。彼はパリで友人と共同経営の会計事務所を営んでいる。妻のことを愛しつつも、日々、電車や道路ですれ違う女性たちとのアヴァンチュールを夢想するのが彼の楽しみだった。ある日、古い友人のクロエが突然事務所に現れる。クロエはフレデリックの友人の元恋人で、しばらく行方不明であった。彼女は海外からパリへ戻ってきて、今はクラブで働きながら、そのクラブオーナーと同棲していると言う。その日以来、クロエは度々フレデリックを訪ねて来るようになる。
ロメールの小説本『六つの本心の話』で読んで以来ずっと観たかったが、レンタル出来ないので心待ちにしていた作品。映画館で観れたのが嬉しい。小説であらすじは知っていたのだけど、フレデリックの妄想パートやクロエの誘惑っぷりなど文字ではわからない面白みがあって良かった。ラストシーンは小説の読み心地ではあっさりしていたように記憶していたが、映画ではとても濃厚な印象だったので、改めて読み直してみると、台詞や出来事の流れはほぼ一致していた。文字情報を自分の頭の中で変換して読んでいたのとは、けっこう異なる演技が為されていたと思う。台詞を言うトーンや表情もそうだし、「泣く」という動作も私がイメージしたのとは全く違う泣き方だった。単に作品を楽しむだけなく、意外な面白みも味わえて、素晴らしい映画体験になった。