『哀しみのベラドンナ』
1973(日本)89分 アニメーション
監督:山本暎一
(あらすじ)中世フランスのある村、結婚式を挙げたばかりのジャンとジャンヌ。結婚を認めてもらうため、領主に貢ぎ物を捧げねばならないが、貧しい農夫のジャンには充分な量が用意できなかった。そのため、ジャンヌは領主と家来たちに陵辱される。身も心も傷ついて帰ったジャンヌを受け入れられないジャン。絶望するジャンヌの前に悪魔が現れる。悪魔の力により、ジャンヌは商売に成功し、村で唯一高い税金を納められるようになったため、ジャンは村の税取り立て役人に出世する。
虫プロ制作の成人向けアニメーション「アニメラマ」の第3作目。成人向けと謳っているだけあって、性描写が過激である。直接のセックスシーンなどはほとんどないが、隠喩表現がすさまじく、悪魔の造形はほとんど男根そのものだった。原作は歴史家ジュール・ミシュレの著作『魔女』なので、直接的には中世の領主の残酷な圧政とその中で特に犠牲になった「女性」の物語であるのは明らかだが、中世ヨーロッパの暗黒を描きたいのか、女性の悲しい宿命・「魔女」裁判などの歴史を描きたいのか、男性と女性の闘争を描きたいのか、あるいは悪魔に魅入られてしまう人間の弱さを描きたいのか、中心テーマがはっきりせず、結局はなんだかモヤっとした感覚が残った。静止画と動画を組み合わせた独自の表現スタイルは、絵巻物や紙芝居を観ているようで、それは楽しかった。