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『ガタカ』

1997(アメリカ)106分 

監督:アンドリュー・ニコル

(あらすじ)遺伝子工学が進歩した近未来。胎児の間に劣性遺伝子を排除し優れた知能や体力を持った「適正者」と自然妊娠で生まれた「不適正者」が区別されている。自然に生まれたヴィンセントは、心臓が弱く30歳までしか生きられないと言われており、遺伝子操作を受けた優秀な弟アントンには何をしても敵わない。やがて、ヴィンセントは宇宙飛行士を夢見るようになるが、両親に絶対に無理だと否定される。ある日、アントンとの遠泳を競うチキンレースで勝利したヴィンゼントは、宇宙飛行士になるため、一人家を出て行く。

「今」の現実とは違う、しかし「今」と地続きのように感じられる、そんな世界観を見せられて圧倒される、SFならではの感動はもちろんだが、この作品はそれ以上に、思い出しただけで胸が締めつけられるような「せつなさ」に満ちていると思う。遺伝子操作が当たり前ではない「今」からすれば、観ている者のほぼ全員が「不適正者」であるから、ほとんどの人がヴィンセントと自分を重ね、ヴィンセントを応援してしまうだろう。しかも、ヴィンセントの夢は叶ったとしても、寿命が伸びるわけでもなければ、宇宙に行ったとてどうにかなるものじゃない、それでも、ただひたすら宇宙に行くという目的のために生きるヴィンセントがせつなくて仕方がなかった。演出も素晴らしく、余計なことを廃した語り口がサスペンスを盛り上げていた。また、ヴィンセントがなりすます「適正者」のジェロームを演じるジュード・ロウの、見るからに「適正者」にしか見えない説得力がすごかった。ゆえに、自分の足で立てず、2位にしかなれなかった男の、せつなさも際立っていた。

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