『百日紅』
杉浦日向子著/漫画/ちくま文庫版
1983年から1987年まで「漫画サンデー」で連載。
葛飾北斎を中心とした実在の人物たちを軸に、江戸の風俗や庶民の生活を描いた作品。
全体を通じて一本の筋がある物語を想定していたら、オムニバス形式だったので驚いた。
一つ一つのエピソードも結末が曖昧に終わるというか、どう解釈したらいいか迷うような描写が多くて(扱う内容も怪談が多いし)、それがとても良かった。
落語を聴くのが好きなのはそこに人々の生活が浮かび上がってくるような気がするからだが、この作品にも全く同じものを感じて嬉しかった。
杉浦氏の漫画を読んだのは『合葬』についで二作目だったが、どちらの作品にも、時々、情景だけのコマが入って、独特の間というか、風が吹くような感じでハッとする瞬間があって、それがとても気に入った。