『園芸家の一年』
カレル・チャペック 著(飯島周 訳)1929年刊行。
いとうせいこうの『ボタニカル・ライフ』で言及されていた本。
カレル・チャペックは、1890年・チェコスロバキア生まれ。
大戦間のチェコスロバキアで最も人気のあった国民的作家。
亡くなった翌年の1939年、ナチス・ドイツがプラハを占領した。
この本に挿絵を書いている画家・作家の兄、ヨゼフ・チャペックは、ナチスの強制収容所で亡くなったという。
10月の章に、10月は4月と同じくらい楽しいと書いてあった。
なぜなら、10月は植物の「地下の芽」が動きだしのびはじめる「春」だから。
作家はきっと自分が生まれ育った風土とその景色、周囲の人々に誇りを持っていて、その愛する暮らしが脅かされているからこそ、このような文章を書いたのだろう。
国家はいま、秋か冬であるが、それは悲観すべき事態ではない、秋は来るべき春への準備期間なのだから。生命は冬眠などしないし終わりもない。冬が来ても、その後で春は必ずやって来る。そんな思いを抱いて、この文章を書いたのではないかと、そんなことを連想した。