『満月の夜』
1984(フランス)102分
監督:エリック・ロメール
(あらすじ)郊外のマンションで恋人のレミと暮しているルイーズは、一人の時間が必要だという理由でパリにもアパートを借りる。当初は反対していたレミだが、ルイーズは強行し、レミは仕方なく彼女の行為を受け入れるようになる。郊外とパリに二軒の家を持つ生活を楽しんでいたルイーズだが、ある晩、パリでレミを見掛け、友人のオクターブが「彼は女性と一緒だった」と言ったために、不安に苛まれる。
冒頭のカットと最後のカットがほとんど同じ画で、郊外にあるルイーズとレミの暮らす部屋に続く道路が映し出される。最初はその部屋の中にいるルイーズとレミから始まって、最後はその部屋から出て行くルイーズで終わる。二軒の家を持った女が、そのうちの一軒と愛を失う物語だということが、見事に表現された始まりと終わり。本当に美しいなぁと思う。
ルイーズは自分本位に男たちを手玉にとっていて、小気味いいようであり、男たちが気の毒でもある。最後はやっぱりしっぺ返しを食うよなぁ、でも最後のルイーズの泣く様がとても良くて、全編通じてルイーズが憎らしく見えない(いわゆる悪女には見えない)ということが、この作品の肝なんだなと思った。離れて暮しても、男友達と遊んでいても、行きずりの男とダンスしていても、ルイーズの心はレミにあるように見える、そこがとても重要。ルイーズ役を演じたパスカル・オジェという女優さんは、「満月の夜」公開から2ヵ月後に25歳の若さで急逝されたらしい。