『三重スパイ』
2003(フランス)115分
監督:エリック・ロメール
(あらすじ)パリ、1936年。在仏ロシア軍人協会で働くロシア人の夫フョードルと暮らすギリシア人のアルシノエは、階上に越してきた教師夫妻のパサール夫人と親しくなる。しかし、共産党員である2人に対しフョードルは警戒を示す。やがて、スペイン内戦が勃発し、周囲が騒がしくなる。フョードルは出張が多くなり、アルシノエは夫の仕事について時々尋ねるが、フョードルは曖昧に答えるばかりだった。
実際の事件を基にしたロメールの創作らしい。スパイものだし、冒頭からニュース映像が入るし、最初はこんなのロメールじゃないやいと思っていたのだけれど、観終わってみれば、これは紛れもなくロメール作品という感じ。スパイものだけど、ほとんどが夫婦の会話劇、史実である事件そのものの描写はすごくあっさりしていて、主眼は夫婦の日常。最後だけを取り出せば悲劇なのだけど、悲壮感はあまり残らなかった。夫の正体、真意がどこにあったのか、最後までよくわからず、結局裏切られた妻もよくわからないまま亡くなったのではないかと思えるような作りになっている気がする。ロメールが描きたかった事が、事件の顛末ではなかったからだろうな。